

澄みわたる青空の下、母の手の中でまどろむ赤ん坊―こちらは聖母マリアと幼子イエスを描いた、15世紀後半・初期ルネサンス期の優品の絵画です。名古屋会場のメインビジュアルのひとつとしてポスターやチラシなど、あちこちに登場していますので、すでにお見かけになった方もいらっしゃるでしょうか。そうした方が実際に会場でこちらの作品に向かい合ったとき、「あれ、思ったよりも小さい!」と驚かれるかもしれません。それもそのはず、この聖母子像は、わずか50cm四方ほどの画面に細部までていねいに描き込まれ、魅力がぎゅっと凝縮されているので、印刷物などで見かけた時はもっとずっと大きな絵をイメージしてしまうのです。
作者のベッリーニはヴェネツィア派と呼ばれるグループの初期の代表的な画家の一人で、本作のように、やわらかな光に包まれた聖母子像を多く描きました。ジョルジョーネ(ジョルジョ・バルバレッリ・カステルフランコ)やティツィアーノ(・ヴェチェリオ)といった、有名な弟子を育てたことでも知られています。本作では、聖母の長く美しい手やイエスの頭髪などの細部などに、優美なベッリーニ絵画の魅力があますところなくあらわれています。
そしてこちらの作品に向かい合ったとき、もうひとつ驚かれることがあるかもしれません。それは、この絵が持つ淡く美しい色彩。やや緑色がかった、淡いブルーの背景の中から、鮮やかな紅色の衣装を身にまとった聖母が浮かび上がります。ほんのりと赤みの差した母子の肌は、透明感があり、思わず触れてみたくなるようなやわらかさに満ちています。名古屋会場の担当学芸員である私自身、展覧会イチオシの作品を選ぶ中で真っ先にこちらの絵画に目が行きました。あまりにも繊細な色合いのため、実は印刷物でこの色合いを再現するのは、なかなか大変でした。会場で、ぜひ実物の色調をご堪能ください。
小さなカンヴァスがかもし出す、豊かな味わい。この冬、美しいベッリーニの聖母子像にぜひ会いにいらしてください!
(名古屋市博物館 学芸員 五味良子)